
依存症回復のために③ ~回復へ導くための手法 「インタベンション」
イラストは「インタベンション」の様子を表したシーン。依存症の当事者と家族の間に専門家として参加し、建設的なアプローチで当事者を依存症回復治療へと導くインタベンショニスト。話し合いは一度だけでなく、回数を重ねて行う。
●依存症は当事者が病気を認めない「否認の病」
依存症回復プログラム特集の3回目。今回は、依存症者本人を良質な回復プログラムへと導いていくための手法についてご紹介します。
一般的に症状の重い病名を宣告されれば、誰でも治そうと治療を受けますが、依存症は当事者が依存状態にあることを認めようとしないことが特徴のひとつと言われ、しかるべき治療を受けるまでに時間がかかる、もしくは受けずに命を落としてしまう危険のある難しい病気です。依存症もほかの病気と同じように、健康的な生活を取り戻すことができる可能性が高いにもかかわらず、当事者には病気であるという自覚がなく、治療や回復に向かおうとしないケースがほとんどです。まわりからの忠告に耳を貸すことすらままならない状態で、家族や周囲の人も不毛なやりとりに傷つき疲弊してしまいます。そして多くの人は依存症という病気をよく知らず、本人の意思の問題であると考えていることがほとんどです。
病気であることを知っていたとしても、正しい対処法を情報として得ることが難しいのが現状です。結果、「言っても聞かないから」「どうしようもない」と放っておくことで事態をより悪化させてしまうことも少なくありません。依存症は自然治癒する可能性は非常に低く、また一度、依存対象を止めたとしても、再発をくり返してしまうことが多い病気です。依存症から抜け出すためには、本人がすぐに病気を認められなくても、治療回復へのきっかけを作っていくこと、その働きかけをあきらめずに続けることが大切でしょう。
●専門家による助けを借りて回復へ
専門のトレーニングを受けた専門家が当事者へ働きかけ、治療回復への道を促す「インタベンション」という方法があります。「インタベンション(intervention)」には、介入、調停、仲裁などの意味があり、依存症回復の専門家である「インタベンショニスト」が当事者に働きかけ、説得、本人の意思で回復の道を選べるよう誘導します。インタベンショニストは、本人もしくは家族などが依存症になったことがあるなど、依存症への理解が深く、適切なコミュニケーションを取りながら依存症者へ自然にアプローチする高い専門性を身に付けています。
このインタベンションという手法は、アメリカではすでに一般的で、依存症の早期回復を促すもっとも効果的な方法として、現在では世界各国で取り入れられています。インタベンショニストの国際ライセンスもあり、日本でも2014年「日本アディクションインタベンショニスト協会」が立ち上げられています。
他の病気と同じように、依存症も早期発見・早期対処が回復への近道となります。しかし当事者が自分から進んで、回復に向けて歩んでいくことはあまり期待できません。出口の見えない膠着状態の中で苦しむ依存症者を、依存症という緩慢な自殺行為から救い出すためにも、専門家に導いてもらう「インタベンション」をおすすめします。
日本アディクションインタベンショニスト協会
http://jaai.oneness-g.com/
日本ファミリーインタベンションセンター
http://www.fic-ag.org/