
悩みを抱える少女を支援する若草プロジェクト誕生、貧困や虐待、性的搾取や薬物依存などから救う全国ネットワーク。
社会間格差が広がり、さまざまな問題が見え隠れする日本社会。貧困や虐待、ネグレクト、家庭内暴力、いじめ、性的搾取や薬物依存、育児ノイローゼなどの問題を抱えた、中高生の少女や、若い女性が増えています。援助交際やJKビジネスといわれる性ビジネスに走る女子高生たちの中には、貧困や暴力問題からの逃げ場として、その世界にたどり着き、生活を続けているという過酷な状況の場合もあります。若さゆえに社会の仕組みや怖さを知らないままに困難な状況に巻き込まれ、またその状況を困難と気づくことができないまま、自分を助けるための情報を持たないまま生き抜くことは、想像以上に過酷です。またこういった環境の中で、薬物依存や人間関係への依存に陥り、症状が悪化している場合も見受けられ、女性の依存症の観点からも見過ごしてはおけません。彼女たちの生きづらさについては、多くの偏見や誤解も存在しており、公的支援も充分に行き届いていないのが現状でした。
一方では、困難な状況にある女性を支援しようとする民間団体の動きが同時多発的に活発化しており、2016年春、ひとつの機運の高まりを得て、彼女たちを支援するための全国ネットワーク「若草プロジェクト」が立ち上げられました。
●「若草プロジェクト」とは
「若草プロジェクト」は、社会の抱える様々な歪みに翻弄され、誰にも相談できずに一人で苦しんでいる少女たちに対して、支援者がいることを伝え、「SOSを発信してもらうこと」を目的のひとつとしています。
呼びかけ人代表のひとりである作家の瀬戸内寂聴さんは「彼女たちの苦悩の原因は、すべて私たち大人が作った現代の日本の歪みが生んだものなのです。どうか彼女たちの悩みを、あなたの悩みとして、共に悩み、苦の出口をみつけて下さい。」という言葉を寄せています。
また、同じく呼びかけ人代表で前厚生労働事務次官の村木厚子さんは「高校生や若い女性が福祉の対象からこぼれ落ちていたのが気がかりだった」といい、同プロジェクトのホームページでも「若い女性や少女に支援が必要というと意外に思うかもしれません。でも、彼女たちは一人で何とかしなければと苦しんでいます。そんな彼女たちにSOSを出していいと伝えませんか」というメッセージを投げかけています。
●「若草プロジェクト」活動の3つの柱
悩みを抱える彼女たちにとって、必要な支援体制を整えるために、下記の3つのことを柱に活動しています。
1.「つなぐ」…ワンストップ型の相談窓口を設置し、必要な支援につなぐ
法律や医療、福祉など、それぞれの分野で活動する全国の様々な支援団体をつなぐ相談窓口になる。
賛助会員、賛助企業を募り、一緒に活動し、財政的な支援を手助けしてもらう。
2.「広める」…支援者がいることを女性へ広め、彼女たちの現状を社会に広める
作家の瀬戸内寂聴さんや映画監督の山田洋次さん、東大名誉教授の上野千鶴子さんなどの著名人も呼びかけ人となり、実情や支援活動の現状を広く伝える。
3.「まなぶ」…支援者の養成・研修を行う
京都・寂庵を拠点として支援者向けの研修会を実施し、各支援団体の高い専門性を学ぶ。
時代に応じて変化する現状を理解し、今後の対応につなげていく。
●「若草プロジェクト」の活動がスタート
これまでは、全国に点在する各分野の支援団体がバラバラに活動してきましたが、この「若草プロジェクト」の呼びかけのもと、各分野のスペシャリストなど約60人が集い、4月24日、25日に京都市の寂庵で発足後初の支援者向け研修会が開かれました。
代表を務める弁護士・大谷恭子さんを始め、呼びかけ人代表の瀬戸内寂聴さんや村木厚子さんのほか、女子高生サポートセンター一般社団法人Colabo代表の仁藤夢乃さんなど、支援団体や当事者から、現状の報告や意見交換が行われました。今後もこの寂庵を中心として支援者たちが集まって活動していく予定です。
支援者たちが力を合わせてひとつになることで存在を示し、支援者と当事者とをつなげる懸け橋となるこのプロジェクト。自分の問題が本当は何であるのかも分からず、心にSOSを抱えながら生きている少女や若い女性たちの現況を改善する大きな一歩となってくれることを望みます。
※詳しくは「若草プロジェクト」ホームページを参照
http://wakakusa.jp.net/