依存症ラボ

lawyer with serious look
依存症全般 2016.07.01

依存症回復のために~治療薬ではない、回復プログラムの存在②~12ステップと治療共同体

写真は治療共同体として有名なアメリカ・アリゾナ州にある『アミティ』の様子。

●依存症は「我慢して止め続ける」スタイルでは限界が・・・
くり返しになりますが、依存症はある対象物の使用や、ある行動がコントロール出来ない状態が慢性化することを指します。ですから、自然治癒する可能性は低く、すぐに止められるというものではありません。依存対象の事を考えず、他に趣味を持つなどで、我慢して止める方法を取る方も多くいますが、長続きせず、依存へ逆戻りという事も多々あります。

我慢によらず、依存対象を止め続ける方法は数多くありますが、望ましいのは「なぜ、そこまで依存しなければならなかったのか」という点を深く掘り下げ、そこから得た気づきを自身の生活に活かしていくやり方です。身体的→精神的・霊的→社会的という段階的な回復プロセスを歩むことで、単に止めているだけではない、心身ともに健康的な生き方が手に入ります。

●「ものの見方、考え方の変容」から手にする回復…12ステッププログラム
効果的な回復手段として、世界的にも代表的なのは「12ステッププログラム」といえるでしょう。12ステップは今から80年ほど前、アルコール依存症から回復したい人たちが集まったグループ「AA(アルコホーリクス・アノニマス)

が作った回復の手段です。現在ではアルコール以外の様々な依存症やその他の問題を解決したい人たちのグループでも使われています。

依存から回復する過程を12の段階に分け、まずステップ1で依存対象に対して無力であることを認め、2解決策があることを信じ、3解決策に取り組む決心をする、と進み、ステップ4~9では過去の感情や行動を見直し、変えていくための行動に移すために、過去の振る舞いで傷つけた相手に‘埋合せ’をします。そして、ステップ10~12では回復状態の維持や仲間の手助けなど、回復した状態を前向きに持続・継続していけるようになっています。まるで、料理のレシピの様に順序良く取り組むことによって、同じような結果(依存からの回復)を手にする事ができるというのが特徴です。

この12ステップを、回復支援施設用に翻案したもののひとつに、「リカバリー・ダイナミクス(RD)」があります。このメソッドは、12ステップを3つのゴール(目標)として理解するもので、ゴール1は、「問題は何であるかを知ること:ステップ1」、ゴール2は、「問題の解決策は何であるかを知ること:ステップ2」、そしてゴール3は「解決策を手に入れるための行動を起こし、結果を手に入れること:ステップ3から12」としています

自らもアルコール依存症からの回復を遂げたアメリカの故ジョー・マキューが中心となって開発したもので、あらゆる依存症の回復において大きな成果を上げることができるプログラムとして、現在、世界中で広く実行されています。

●「共同生活での自身の生き方の変容」から手にする回復…治療共同体
また、治療共同体(TC:Therapeutic Community)という手段も著名な回復と言えましょう。治療共同体という言葉は様々な使われ方をしますが、「責任が伴った共同生活を通して、人間の行動様式を改善する事を目的とする共同体」という定義づけができます。有名なのはアメリカ・アリゾナ州にある治療共同体『アミティ』であり、日本でもアミティモデルを取り入れた回復施設や矯正施設があります。

治療共同体では、傷つけられる恐れを抱かずに自分の考えや感情を表現することと同時に、同じ場所で暮らす仲間の安全を尊重しお互いに助け合うことを学んでいきます。また、アミティでは自分の感情も気付き、理解・表現してく能力を「エモーショナルリテラシー」と呼び、これを高めていくことをプログラムの根本にしており、依存を使って生きざるを得なかった本人の心の中にある「生きづらさ」を解消していくことが、結果的に止め続ける力になっています。

このように、依存から回復し続け、健康的な生き方を手にするためには、同じ目的を持った仲間たちと、これまでお伝えした回復手段を取り入れる事が効果的と言えます。我慢して止めるのではなく、自身の心が成長することで、依存対象を使用する動機が薄くなり、ふと振り返ると止めている期間が続いている…。このような専門的プログラムが受けられる回復支援施設で、集中して、段階的に回復していくことが理想ではないでしょうか。

依存症相談窓口

ギャンブル、アルコール、薬物依存症でお困りならご相談ください。
薬物問題でのご相談の場合も、秘密は守られます。安心してご相談ください。

依存症SOSメール相談