
依存症から回復して社会復帰、新たな人生をクリエイトする若者
アディクションラボでは、以前より、依存症から回復し、社会復帰と自立を目指すための「就労支援プログラム」について紹介してきました。今回、沖縄県の地元新聞『琉球新報』で以下のような記事が紹介されておりましたのでご紹介したいと思います。
■ギャンブル依存に決別 ラーメン店で再起(沖縄、琉球新報の記事)
http://ryukyushimpo.jp/news/entry-341362.html
●就労支援プログラムとして
今回、記事中で紹介されているラーメン店は、沖縄の観光地でもある那覇市、首里城近くに2016年7月にオープンした『麺屋拳玉(けんだま)沖縄』です。化学調味料不使用で、子どもから大人まで安心していただけるスープがウリのラーメンと、沖縄のソウルフードであるステーキなど肉料理が自慢の店です。名古屋に1号店の『麺屋拳玉』があり、その2店舗目として沖縄でオープンしました。実はこちらの店は、依存症回復支援施設が母体となって運営しており、スタッフは全員、何らかの依存症からの回復過程にある方々です。ラーメン店らしい元気のいい接客に、スタッフの笑顔、アメリカンなムードの店内…。普通に食事をしているお客さんには、店舗が就労支援プログラムの一環として運営されているとは、まったく感じられないことでしょう。明るく一生懸命に働く姿には、かつて依存症に苦しんだ面影は見られません。
●ギャンブル依存からの回復を遂げて
写真の清水直人さん(左)と中村祐輔さん(右)は、以前、ギャンブル依存症でした。2人は家庭内や職場で、問題が頻発していた4年前、回復支援施設につながり、ギャンブルからの脱却、また自分自身が抱えていた生きづらさと向き合いました。
中村さんは12年間、フィギュアスケートの世界でがんばってきた方。「心のメインテナンスをしながら、仕事をするのは大変」と話ますが、今の仕事は楽しめているそう。いつかスケートに関わる仕事に就くことが目標だそうです。
また、調理担当という重要なポジションを任されている清水さんは、離婚を決断しようか迷っていた奥さんが、最後の思いで施設に相談。介入(インタベンション)という手法で4年前に家族のもとを離れ、入所。慣れない施設生活に戸惑いを感じながらも、スタッフや入所メンバーに支えられ、1年ほどで施設を卒業しました。
関東で待つ家族との再会を果たし、再び料理人としての道を歩み始め、お子さんの誕生。奥さんとともに3人の子どもの将来を考えるなか、以前、回復を目指した施設が新しくラーメン店を沖縄で立ち上げる話を聞き、転職を決意、家族全員で沖縄へ移住しました。
清水さんは、開店前、名古屋本店に通い、レベルの高いラーメン作りを修業。沖縄へ居を移して以降は、ラーメンのみならず、肉系のメニュー作りにも取り組み、プロの料理人としてのプライドをもって開店へ臨みました。思い通りにならない日、移住間もない家族の苦労などもありますが、毎日、いきいきと仕事に励んでいます。
●社会として受け皿を
依存症からの社会復帰を目指す方々の中には、もともと社会経験が豊富で依存症になり、休職中だった会社に復帰できる方もいれば、若くして依存症になり、社会経験が少ないままの方もいます。また社会経験のあるなしに関わらず、いきなり社会へ出ていくことが負担に感じる方もいらっしゃいます。そういった時、このような就職支援プログラムとしての就業先があることは、社会としてやさしいステップだと言えるでしょう。
回復支援施設から社会に復帰することに対して、社会的な受け皿が整っているとは言い難いのが、現在の日本の状況ですが、安心できる回復施設や自助グループとのつながりを保ち、適切なカウンセリング受けながら、まずは働く練習をする。その体験のなかで自分への信頼を高め、本格的に自立へと進んでいけるような道筋が多くできることが望まれます。