
中高年に拡がる薬物使用と依存症
○拡がる薬物依存症と薬物問題
今、覚せい剤などの薬物は大きくニュースとして報じられ、社会問題として認識されています。芸能人やスポーツ選手などが逮捕される事例は、氷山の一角でしかありません。
こういったスターダムに存在する人は、金銭の余裕があることもあって、薬物の売人のターゲットにされやすく、長期間に渡って搾取されると言われています。
薬物問題は特別な環境にいる人だけの問題ではありません。今、特に中高年の覚せい剤使用での検挙率が増加していることが注目されています。一般の中高年世代の方が、気軽に覚せい剤に手を出してしまう状況が拡がっています。平成26年の調査では、30代以上の覚せい剤取締法違反での検挙率が、全体の86.5%にも及んでいます。
○中高年世代が覚せい剤に手を出す背景
なぜ、中高年世代の方が、覚せい剤に手を出しやすいのでしょうか。ひとつには、覚せい剤の価格があげられます。他の薬物に比べ、覚せい剤の価格は高いため、お金を持っている中高年世代がターゲットにされやすいとようです。またインターネットの普及による、より手軽に覚せい剤を入手できるようになりました。このような背景から、一般の中高年にも、薬物依存症が広まっているのです。また中高年世代に特有の心の特徴も理由のひとつにあげられます。ビジネス面からのプレッシャーからの開放、気力体力の衰えから喪失した自信の補填など、何かから逃れたり、何かを埋めようとしたりして、使用する場合もあるようです。
簡単に薬物が入手できるようになった現代では、目の前にいる家族や、あるいは自分自身も、いつ薬物に手を出して、逃れられなくなり、依存症になるかわからない状況といえ、決して他人事ではありません。
○薬物に手を出さないために、依存症にならないために
まず薬物依存症について知識を学ぶことです。一般的な生活のなかでは薬物依存症について詳しい知識を学ぶ機会が少ないこともあって、依存症について様々な偏見や誤解が生じています。私たちの社会が、薬物などの依存症に対して無知であるがゆえに、薬物依存症で苦しむ当事者やご家族を精神的に追い詰めたり、孤立させたりしている場合もあるのではないでしょうか?
もうひとつ重要なことは、薬物依存症を改善していく環境の整備です。依存症回復支援の自助グループは、依存症を解決していくための中心的な役割を果たしています。国内では、回復支援の活動がまだ社会的にそれほど認知されていません。その結果、薬物依存症に関わる多くの方々が、より大きな苦しみを抱えています。早急に、薬物依存症を解決する環境の整備を進め、また社会としての理解を深めていきましょう。