依存症ラボ

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薬物依存症 2016.06.16

プリンスの死と鎮痛剤の過剰摂取 ~ 私たちにも

起こり得る依存の問題

世界的に有名なミュージシャンがまた突然、この世を去り、大きな衝撃が走りました。2016年4月21日、自宅スタジオ内のエレベーターの中で意識不明の状態で発見されたプリンスは、「フェンタニル」という鎮痛薬の過剰摂取による中毒死でした。死亡の前日にプリンスの関係者が、薬物依存の専門家ハワード・コンフェルド医師に連絡しており、その医師の息子がプリンスの自宅を訪ねたところ、倒れているプリンスを発見したとのこと。まさに治療を受ける直前の悲劇でした。


●プリンスの命を奪ったオピオイド系鎮痛剤とは?
プリンスは近年悩まされていた腰痛から鎮痛剤を使用するようになり、依存が始まったのではないかと言われています。死亡の原因となったフェンタニルは、現在アメリカで問題が拡大しているオピオイド系の鎮痛剤です。
アメリカでのオピオイド系鎮痛剤の中毒者数は2013年の時点で190万人に達し、過剰摂取によって死亡する人は2000年以降3倍に増加しています。原材料は植物のケシから採取されるアヘンで、使用法によってはヘロインの何十倍もの強い鎮痛作用があると言われています。このオピオイド系鎮痛剤にはさまざまな種類があり、鎮静効果の強い「強オピオイド」には、がんなどの痛みを緩和するために使われるモルヒネをはじめ、オキシコドンやフェンタニルなど、「弱オピオイド」は日本でも咳止めシロップに含まれているコデインなどがあります。

●私たちみんな誰にでも起こり得る依存
日本では強オピオイド薬の消費が少なく、この薬物についてはアメリカほど社会問題として知られてはいません。しかし、何かに依存すること自体は、どこにいても誰にでも可能性があることです。
プリンスが鎮痛剤依存に陥っていることは、側近以外には知られていなかった一方、完全菜食主義者(ヴィーガン)でアルコールやドラッグに無縁な完璧主義者として有名でした。また、2009年に亡くなったマイケル・ジャクソンも「プロポフォール」という麻酔や鎮静に使われる薬の過剰摂取による心停止が原因でした。
有名人や芸能人、ましてや世界的なスターともなると、一般人とは比べ物にならないストレスやプレッシャーを抱えて日々過ごしていることと思われます。自分自身の才能や力に行き詰まりを感じる時などに、薬物の力を借りることがあるとも聞きます。「なぜ薬物を使用するのか?」と、動機に疑問を持つかもしれませんが、私たちにも大なり小なり悩みがあり、ストレスや緊張を和らげようとするとき、タバコやアルコールに手がのびるのと同じ心理です。

依存には、依存物質や行動に頼らざるを得ない状況があります。その根本に目を向けることはつらく難しい作業です。困難をできれば避けたい気持ちが「何かに依存する」という形となって現れることが多く、それは人として当然の心の動きです。そのバランスが崩れて、のめり込んでしまった時に、身体的、社会的なさまざまな問題が生じ、本人の意志や家族のサポートではどうしようもなくなってしまった状態が「依存症」という病気と言えます。
プリンスのように専門医に助けを求めるのがひと足遅く、手遅れになることのないように、周囲が早めに気づき、手助けやサポートをすることが回復への入口となるはずです。

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