依存症ラボ

Midsection of woman stealing capsule packet at supermarket
その他 2016.02.09

クレプトマニア(窃盗癖)という苦しい「病気」

○クレプトマニア(窃盗癖)を知っていますか?

 何度何度も、逮捕されても窃盗をくり返す人がいます。近年、テレビ番組でも取り上げられることなどもあり、知られるようになってきました。近年は高齢の方の窃盗が増加していること。その背景には認知症が絡んでくるケースも。また盗んでいることに意識がないケースもあり、窃盗の裁判が終了したその足で、売店でパンを万引きしてしまったというようなこともあったそうです。ほかにも社会での生活が困窮し、盗みをくり返して衣食住が整っている刑務所への入所を望んでいる高齢者の方も存在するとか。なんとも切なく悲しい現実です。こういった窃盗に関する事件の中には「窃盗癖(クレプトマニア)」という依存症の可能性があることも高く、この場合は物を盗むことへの欲求や衝動が抑えられない精神疾患のひとつと考えられます。盗みの種類が、店舗などでの万引きが多いということもあり、「万引き依存症」とも呼ばれます。こういったケースの場合は金銭的に余裕がない、物欲が強いわけではありません。また盗みの対象は安価なものが多く、盗んだ後は一切の関心が失われるため「捨てる」「他人へ渡す」「店へ返す」などの行動に出る人も。盗んだものへの執着がないことも特徴です。

 窃盗癖(クレプトマニア)は「物を得るための窃盗」ではなく「快感や満足感を得るための窃盗」といえます。しかし快感や満足感は一時的なもので、窃盗後は強い後悔と自己嫌悪に襲われるのが最大の特徴です。患者は女性が多く過食症や拒食症といった「摂食障害」を併発している場合もあるそう。ほかにも大企業の役員や医師など社会的地位のある方でもなることも。窃盗癖(クレプトマニア)、過食症や拒食症に共通するものは、いずれも自分を追い込む「自傷行為」に他ならず、ときに命の危険につながることもあります。何かおかしいと感じたら、周りの人が早めの対処を心がけてください。

○クレプトマニア(窃盗癖)は治るの?

 依存症は精神疾患のひとつ、病気です。ですから適切な治療が必要なのですが、専門の病院は全国でも少ないのが現状です。またクレプトマニア(窃盗癖)は再犯率が高いことから、なかなか周囲の理解を得られず、社会との間に隔たりが大きくなってしまいます。クレプトマニア(窃盗癖)が心の病気だという社会の認識はまだ低く、患者が社会から孤立してしまうケースも少なくありません。では窃盗常習犯と何が違うのかという問題がありますが、ことクレプトマニアは病気ですから、犯罪者として接するのではなく、症状の背景にある本当の原因を理解し、適切な治療へ導いて、その方自身が真の回復を遂げられるよう手助けすることが、社会に必要なのではないでしょうか? もちろん、病院だけでなく、依存症回復支援のための施設に相談してみるのもよいでしょう。本人は病気だと気づかないことも多いですから、まずは家族やまわりの方が行動してみてください。

○KA(クレプトマニア・アノニマス)の支援

クレプトマニアという難しい病気ですが、こういった方々を支援するグループが存在することをご存知でしょうか? KA(クレプトマニア・アノニマス)という当事者グループで、全国に広がっていますから、グループのミーティングに参加することも解決へつながるはずです。活動に参加することは、基本的に匿名ですし、住所などの個人情報を伝えることもありません。プライバシーは保護されているので、安心して参加できるそうです。仲間を得ることで病気と向き合い、克服に繋がると願いを込めて立ち上げられ、急速に活動が広がっています。

 クレプトマニアになるには、その背景に理由があることが多く、そこへのアプローチなしに回復することは難しいと言われます。依存症全体への理解が少しずつ広がっている今、クレプトマニアに関しても、当事者を救おうとする活動が国内で広まりつつあることは頼もしいことです。犯罪として裁かれるのではなく、正しい治療につながり、真の回復を目指してほしい。サポートの場がさらに増え、ひとりでも多くのクレプトマニアの方が救われる社会が来ることを願います。

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