
アルコールとの適度なつきあいって!? 飲酒ガイドラインを知っていますか?
○アルコールは健康によい? 悪い?
アルコールは一日の疲れを癒してくれ、社会においてコミュニケーションアイテムとして、私たちの日常生活に存在しています。昔から「酒は百薬の長」「適度な飲酒は健康によい」と言われていますし、歴史文化の中に深く生活に根づいています。ビールに発泡酒、日本酒、ワインにウィスキー、焼酎…実にさまざまな種類のアルコールが、店頭や自販機、飲食店など、実にたくさんの場所で販売されています。いつでもどこでも気軽に楽しめるアルコールですが、近年では、過度の飲酒や長年の飲酒習慣によって、生活習慣病やさまざまな病気を発症する原因になるとして、意識が変わってきています。肝障害や胃腸疾患、高血圧や脳終結などなど、多くの病気に関わりがあることが、医学的にわかるようになり、それとともに飲酒量に警鐘が鳴らされるようになりました。コミュニケーションや愉しみといったポジティブな側面はもちろんですが、習慣と量によってはアルコールは健康を害するとの発信が盛んになっています。いわゆる「適量」も、日々、進化する医学研究の中で変わっていますし、先進国をあげて飲酒と健康の関係性が研究されています。
○厳しくなったイギリスの飲酒ガイドライン
この1月、イギリスでは飲酒量の上限を示すガイドラインが改訂されました。これまでのガイドラインは1995年に策定されたものですから、実に20年ぶりです。イギリス保健省の発表によれば、この改訂によって、男性女性共に、週に14ユニット以上のアルコールを飲まないように推奨しています。また、ガイドラインのアルコール上限枠内であっても、一気に飲むのではなく週の3回以上に分けて飲むことを薦めています。
14ユニットとは、アルコール5%のビールで大瓶約4本(約2.6リットル)、アルコール14%のワインで約1.3本(約1リットル)の量になります。ちなみに、これまでのガイドラインでは、男性は週に21ユニットまで、女性が週に14ユニットまででした。また、このガイドラインでは、「お酒が健康によいという根拠はない」ことや、「妊娠中の女性はアルコールを摂取すべきではない」と断じています。イギリスにはビールとフィッシュ&チップスでローカルコミュニティを作ってきたパプ文化もありますから、この発表をイギリスの紳士淑女はどのように受け取っているのでしょう。
○最新医学研究を反映してガイドラインを作成
もっとも英国保健省によれば、ガイドライン改訂のきっかけはアルコール摂取と発がん性リスクの最新医学研究成果だと述べています。1995年当時はまだ不明だったアルコール摂取と発がんリスクとの関係性が、この20年間の研究によって明らかにされたのです。それによれば、少量のアルコール摂取であっても、まったくアルコールを摂取しない人に比べて、発がんリスクが高まるや、アルコール摂取を止めても、まったく摂取しない人と同じレベルに戻るまでには数年かかることが述べられており、今回の大幅な改訂につながったとしています。アルコールが健康を害するものであるという認識は、その他欧米諸国でも進んでおり、最新の医学研究が反映される流れにあるようです。
●日本のガイドラインを知っていますか?
日本ではアルコールの健康障害に対する包括的な施策を定めた「アルコール健康障害対策基本法」が2013年に公布され、2014年に施行されました。ご存じでしたでしょうか? 日本でも世界の流れと同じ動きがあるのですね。とはいえ、まだまだ始まったばかりです。今、ようやくアルコールの健康障害について、国としての対策が整いつつあります。
現在、日本のアルコール摂取ガイドラインとしてあるのは、2000年に厚生労働省によって策定された「健康日本21」です。この中で、節度ある適度な飲酒ガイドラインとして1日平均純アルコール量は20gとされています。たとえば以下のようになります。
・ビール(アルコール度数5%)…中ビン1本(500ml)
・ワイン(アルコール度数14度)…1/4本(約180ml)
・缶チューハイ(アルコール度数5%)…1.5缶(約520ml)
・日本酒(アルコール度数18度)…1合(180ml)
・焼酎(アルコール度数25度)…0.6号(約110ml)
・ウイスキー(アルコール度数43度)…ダブル1杯(約60ml)
また週に2日は休肝日を作るように推奨しています。この値が策定されたのも、今からおよそ15年前ですから、最新の医学研究が反映され、また世界の動きに準じるようになれば、改訂されるのではないかと思います。飲酒は決して悪いことではありませんが、健康を害するだけでなく、社会的な問題を起こしてしまう原因にもなります。飲酒好きな方には耳に痛い話かと思いますが、社会で取り組むべき課題のひとつとして、まずはガイドラインを認識してつきあっていきたいですね。