
あなたは大丈夫!? 国内成人男性の「10人に1人」がギャンブル依存!?
●日本人成人男性の「10人に1人」がギャンブル依存!?
競馬・競輪などのレース、くじ、パチンコやパチスロ、麻雀…、レジャーとして楽しんでいる人は多く、どれも日常生活の中で聞きなれた言葉です。しかしこれらの遊技には「ギャンブル性を有する」という一面があります。「ギャンブル」というと、きらびやかな海外にあるカジノのように特別な場所で行うもので、他は単なる遊びというイメージを持っている人もいるようです。「遊戯」という位置づけがされているパチンコやパチスロも、ギャンブル性を有するという意味で、同じように考えてよいでしょう。
「日本の成人男性でギャンブル依存の疑いがある人の割合は、全人口の9.06%(成人女性は1.6%)」というデータがあります。これも日常的にギャンブル性を有するレジャーが存在し、気軽に楽しめるという背景が理由のひとつにあるかもしれません。この数字はあくまで「疑い」というレベルで、すべてが依存状態ではありませんが、「成人男性の全人口の9.06%」とは、約10人に1人がギャンブル依存やその疑いの段階に陥っているということです。
諸外国と比べてもこの数値は高いですが、日本ではアルコールや薬物の問題と同等、それ以上にギャンブルに問題を抱えている人がいること自体、まだ社会的認知が低いのが現状です。
●諸外国と比べ、気になる国内のギャンブル依存症罹患率
1991年にイギリスで生まれ、野宿生活をする人(ホームレス状態にある人)に仕事を提供し、自立を支援することを目的とした雑誌『ビッグイシュー』は、2003年に日本でも誕生しました。
この『ビッグイシュー日本版』発行元を母体に設立された「ビッグイシュー基金」が2015年10月に発表した調査報告書によると、国別のギャンブル依存症の割合は、アメリカ0.42%、イギリス0.55%、スペイン0.3%などほとんどの国で1%未満です。多いところでは南アフリカ1.4%、ノルウェー1.9%、シンガポール2.1%、香港2.2%のほか、大規模なカジノがある中国のマカオ1.8%、ラスベガスのあるネバダ州で男性3.5%、女性0.3%となっています。
調査方法も違いますので、単純な比較は難しいですが、日本の数値が高いのは気になるところです。
●ギャンブル依存症の対策はこれから
ギャンブル依存症はWHO世界保健機構で、治療が必要な病気であると認定されているにもかかわらず、国内には回復支援できる施設や団体がまだ少なく、本格的な対策はこれからです。
アルコールや薬物などの「物質依存」と比べて、「行動依存」と呼ばれるギャンブルや買い物などの依存症は、一見してわかりにくいことも多く、発見や治療が遅れがちです。特にギャンブル依存症の場合は借金をくり返し、金銭トラブルを起こしてしまう点で社会的なダメージが大きく、度重なるトラブルの結果、職業や家族を失い、結果的にホームレスになるという貧困につながることも。本人の自覚がない、周囲の人たちも病気だと思っていないことなどから、症状や状況が深刻化する危険性が高いのです。
●さまざまな団体が力をあわせて「ギャンブル依存症問題研究会」が発足
2016年3月、前述のビッグイシュー基金のメンバーが中心となって「ギャンブル依存症問題研究会」が発足しました。福岡県で開かれた第1回目の研究会では、基金のメンバーのほか、日本各地のギャンブル依存症回復施設の代表などが参加。『ギャンブル依存国家・日本』著者である精神科医の帚木蓬生氏を迎えて、各々の活動状況の共有や回復した当事者のヒアリング調査項目の検討などが行われました。
ギャンブル依存症は心の病気です。「楽しい事を、好き放題やっていて止められないのは、その人の意志や根性が弱いからだ」と自己責任論で片付けられがちですが、依存症から派生する社会的・経済的な損失を防ぐといった意味でも、依存症者のケアやギャンブルと正しくつきあう方法を国や社会が責任を持って考え、例えば、青少年に向けた依存症予防教育など、何らかの対策や施策を整える時期にきているのではないでしょうか。
昨年から大きく報道されているスポーツ選手の野球賭博問題や闇ギャンブル通いの問題も、その違法性を云々するだけでよいのでしょうか?「なぜ、違法であるにも関わらず、そこまではまり込む必要があったのか?」という面から、その人たちの心の中にスポットをあてると、決して他人事でないことや誰しも依存に陥る可能性があることが分かります。
世の中には、課金ゲームのようなギャンブルでないにも関わらず、過度なギャンブル性を有するものが問題になっています。また、議論は停滞しているものの、IR(カジノを含む統合リゾート)設置も将来的に考えられるでしょう。だからこそ、ギャンブルに対する正しい知識を早い段階で身に付け、自身を守り、楽しく遊ぶことができるという方策が必要です。
依存症は本人や家族の力だけでは、回復は難しい複雑な病気です。今回、各団体が手を携えて集結したことは状況を少しでも変えられる希望になるはずです。またこの研究会の情報発信や活動が活発化することで、関心を持つ人が増え、結果、国や社会へ問題を提起することにつながります。アディクションラボでも、これからの活動を引き続きレポートしたいと考えています。
<参考サイト>
ビッグイシュー基金
http://www.bigissue.or.jp/activity/info_16030201.html
http://bigissue-online.jp/archives/1048903467.html