依存症ラボ

Young miserable depressed man sitting and thinking
その他の依存症 2016.02.09

「依存症」から考える元キングオブコメディ・ 高橋健一氏 女子高生制服窃盗事件(前編)

○人気芸人の犯した女子高生制服窃盗、“20年間”“600〜700点押収”の衝撃

 昨年末、人気お笑いコンビ・キングオブコメディ(逮捕後解散)の高橋健一氏が女子高生の制服を盗んだ疑いで逮捕されたのは世間に大きな衝撃を与えました。「20年以上前からくり返していた」という供述。自宅から押収された盗品と思われる制服の数は600点とも700点とも報じられ、その夥しい数に世間は震撼。

 高橋氏は実は、2007年にも痴漢容疑で逮捕、その後、嫌疑不十分として不起訴、つまり「冤罪」とされていましたが、それさえも疑わしいのではという声も少なからず聞かれました(これに私としては一言ありますが、ここでは触れません)。多くの非難の声が上がり、彼のツイッターアカウントには「逮捕おめwww」など、本件を揶揄するツイートで溢れかえったといいます(すでに閉鎖)。

 10代の被害者にどれほどの恐怖と、心の傷を与えたか。若い世代にも大変人気のあったコンビですから、被害者のなかには彼のファンがいた可能性だってあります。被害者に与えた傷、相方の今野浩喜さん、事務所の方々、ご関係者、ご家族に与えたもの——それは彼が重く、そして真摯に受け止め、生涯背負っていかねばならないものでしょう。

○高橋健一氏は“依存症”だった? 誰もがなりうる依存症の怖さ

 しかし今回、私が筆を執ったのには理由があります。彼には「依存症」という観点から治療を施すことが必要な状態だったのではないか。専門の治療を受けて回復を目指すべきだったのではないかと思うのです。依存症にもさまざまな依存対象があります。彼の場合、「性依存」と「クレプトマニア(接盗癖)」を併発していたのではないかと考えます。

 依存症について詳しくない方は、どちらも聞きなれない言葉かと思いますので、簡単にご説明します。

「性依存」について。逮捕時に、高橋氏は「性欲が抑えきれなかった」と供述したといいます。しかしここでいう“性欲”を、私たちが普段の生活のなかで抱く“性欲”と同等にとらえられる種類のものではありません。彼が駆られてきた衝動は、私たちの考える“性欲”の範疇にはあたりません。薬物依存症と同じに考えてください。意志の力ではとうてい制御のできないものです。「性」という分野であるだけに人に打ち明けにくく、本人が人知れず抱え込んでしまうことが多い。また明らかになった場合には、社会からは白眼視されます。そう、今回のネットで集団リンチのように行われた高橋さんへの執拗なからかいのツイートのように。白眼視されることを知っているから、本人はますますひとり胸の内に隠す。適切な治療へ繋がることもなく、ますます病理に蝕まれていく…悪循環です。

 また「クレプトマニア(窃盗癖)」は、くり返し万引きで逮捕される依存症です。ご高齢の方などのなかにも、少なからぬ数含まれているでしょう。こちらも「やってはいけないこと」と重々わかっていながらも、“盗る”ことへの欲求は、自分の力では到底コントロールできるものではありません。もちろん反社会的行為です。本人も痛いほどよくわかっています。

 どちらも「やってはいけない」とわかっているからこそ、苦しむのです。それが「病気である」ことを本人はもちろん、周囲も認識する機会がない。治療・回復の道があると知らない。家族が争いになることは容易に想像できます。

 ここで皆さんに知っていてほしいことがあります。「依存症」とは、決して特別な人だけがかかる病気ではありません。誰にでもふとしたきっかけでなる可能性があるのです。あなたも。あなたの隣のあの人も。あなたの大切な家族でさえ、依存症になる危険性とまったく無縁ではありません。誰もが「高橋健一」になりうるのです。このように同じ犯罪行為でも「依存症」という観点に立つと、まったく違った見え方になります。そう考える知識と心があれば、少なくとも、いたずらにツイッターアカウントへ事件をからかうコメントを投じる気は起きなかったのではないでしょうか?

○性犯罪抑止・再犯防止に求められるのは、「刑罰」とともに「治療」である

 薬物犯罪、性犯罪は再犯率が大変高いことはご存知かと思います。なぜそれほど再犯率が高いのか。ここまでお読みくださったあなたならおわかりですね。それは「依存症」という「病気」だからです。「病気」ということは、加害者は犯罪者であると同時に“「治療」が必要な対象”なのです。性犯罪抑止・再犯防止については、「(厳罰化を含めた)刑罰」という観点ももちろん必要ですが、それだけでは不十分であると考えられるようになってきました。

 治療を要する病気なのですから、それを施す仕組みが必要なのは自明の理です。後編では性犯罪者の処遇について、日本と各国の現状をお伝えするとともに、元キングオブコメディ・高橋健一氏が起こした事件の背景を見つめます。

★関連書籍『這い上がるヒント 諦めなかったお笑い芸人30組の生き様』大川内麻里 著(東邦出版)(http://www.amazon.co.jp/dp/4809410250/

(文:麻生マリ子/母娘・家族問題研究家)

女性たちの抱える生きづらさの背景として、母娘関係に着目。10年間に渡る取材・著述活動を経て、現在は母娘問題・家族をテーマに研究、著作。また新聞や雑誌、WEB媒体などへ寄稿、コメント提供を行う。1977年、福岡県生まれ。自身も娘を持つ母である。

・ブログ:http://ameblo.jp/asomariko/

・公式Facebookページ:https://www.facebook.com/asomrk/

依存症相談窓口

ギャンブル、アルコール、薬物依存症でお困りならご相談ください。
薬物問題でのご相談の場合も、秘密は守られます。安心してご相談ください。

依存症SOSメール相談